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裏切り : 第五章【ありがとう】
参観日だった。 母が来てくれていたころ、ぼくはいつも何度も振り返っては手を振ったりしていた。母は笑っていた。まわりにいるお母さんたちも笑っていた。 でもその日は、もう来ない。 振り返っても、だれもいない。ぼくを見守ってくれる人はもういない。同じ場所に向かって隣を歩いてくれる人、一緒に帰ってくれる人がいない。映画やテレビによくある一つのシーンがそのままそこにはあった。 父は仕事 ……
- 2008年10月31日 07:58
裏切り : 第四章【母の言葉】
「ごめんね……」 それから一週間が経ってすぐに、ぼくは母に電話した。 「……ごめんね」 母が言った。顔の見えない電話の向こうで泣きながら、また何度も何度も繰り返した。 あの日と同じことの繰り返し。 ぼくは電話を切ったあと、もう泣くのをやめた。 泣いてもなにも変わらない。泣いても母は帰ってこない。 もう帰ってこないこ ……
- 2008年10月31日 07:48
裏切り : 第三章【写真】
父は立ち上がると、重く、床の下に響き渡るような足音で、ゆっくりとぼくらのほうへと歩み寄ってきた。 ぼくはもっと涙を我慢した。怖かった。顔さえあげることができなかった。 「なあ、おい……」 でもそのとき見上げた父の顔は、すごく優しかった。 今でもはっきり憶えてる。ムリして笑おうとしていた涙顔。もしかしたら、その日のだれより優しい顔をしていたかもしれない ……
- 2008年10月31日 07:33
裏切り : 第二章【記憶】
「ごめんね……」 母が言った。 「……ごめんね」 母は泣きながら何度も何度も同じ言葉を繰り返していた。涙の数だけ繰り返されるその言葉を、そうやってぼくに伝えていた。涙があふれてこぼれるたびに指で拭う母だったけれど、それはずっと止まることはなかった。 「ごめんね……ごめんね…&helli ……
- 2008年10月31日 07:21
裏切り : 第一章【バイバイ】
また逢えるよね また逢えるんだよね また逢えるってことだよね また逢えるようにって約束だよね それを確認するするように それを自分に言い聞かせるよに 泣きたいけれど笑えるように 何度も何度も繰り返せるよに もう逢えないのかな もう逢えないんだよね だからバイバイするんだよね でもそれなら「さよなら」って言ってよ 友達みたいな言葉だけで ……
- 2008年10月31日 07:04
裏切り : プロローグ & 表紙
裏切り : プロローグ & 表紙裏切り : 第一章 【 バイバイ 】裏切り : 第二章 【 記憶 】裏切り : 第三章 【 写真 】裏切り : 第四章 【 母の言葉 】裏切り : 第五章 【 ありがとう 】裏切り : 第六章 【 嘘 】裏切り : 第七章 【 涙 】裏切り : 第八章 【 空白 】裏切り : 第九章 【 安心 】裏切り : 第十章 【 後悔 】裏切り : 第十一 ……
- 2008年10月31日 06:55
占い : プロローグ
学校までの道。 夕暮れどきにはカラスがどこか知らない場所へ鳴きながら飛んでいき、雨の日にはなんとも言えないほど不気味に見えた。どんよりとした重苦しい曇りの日には、まだ見えてもいないのにその先にある学校の校門に睨まれているような気がして行く気がしなかった。 わたしはいつもその道を通って小学校に行っていた。 小さな家が連なって自然とできあがった、小さな町の小さな道。 気分のいい日 ……
- 2008年10月31日 04:34