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粒
2008年5月 7日 00:55
僕は僕であって 僕でしかないんだけれど この僕がいつか いつの日かどこかの誰かが必要としてくれたとき そのときだけでもいい そのためにあればいいなって 冷たい雨に打たれて感じた 僕が雨に濡れてるとき きっと誰かも濡れてるんだ 僕は知らない だけど濡れてる人がいる 僕が恋人を抱きしめてるとき きっとたくさんの人もだれかを抱きしめてる だけどそれを知らない人もいる だれにも抱きしめてもらえず泣いてる人もいる そんな人に僕はなにもしてやれない ただ思う 僕が幸せを感じてるとき そうじゃない人もいるんだって 幸せなこの瞬間に、と、そうじゃない人に 涙が出てくる ただの優越感なのかもしれない そうじゃない人への同情なのかもしれない 下にも上にもキリがない 卑屈になればいくらでも僕は小さくなれる だけど思う 僕がどんな気持ちでいても だれかがどんな気持ちになっても 僕が涙を流すそれはいつ...
それなり
2007年4月 5日 00:53
見た目以上に冷たい地面 鉄のような煙を上げる道路 うろこのように黒茶けた樹皮 乾いてる 求めてる そして飢えてる 必死になったことがない がむしゃらに働いたこともない あきらめるのも早い そのくせ捨てることはできないでいる 歩くのが速い人には ついていこうともしなかった 僕がやることはいつもそれなりで 人にはムダだと言われがちなこともやってきた 食えない道草を探しながら 遠いのか近いのかもわからないまわり道をした でもそれはそれで 今の僕にそれなりの役には立ってると思う 誰かがそれをムダだと言ったって 僕にとってはそのすべてが今になっている なにもかもがつながっている つなげてくれる たとえそれはもしかしたら自分にすら取るに足らないかもしれない だけどなにか1つが欠けてしまってもダメなんだ 捨てきれない夢も破れた恋も 壊れた絆も色褪せてゆく想い出も 自分に自信が持てないでいる...
焼ける唇
2007年3月28日 08:03
どんな顔をしてんだろう? 目を閉じて また開けて 永いようで短い夜が明けてくように そっと唇も開きかけて まるで蜂蜜のようなその甘いやわらかさ ほんの少し僕も濡らして 糸を引くほどの余韻だけを残して また少しぬくもり重ねて まるで花びらがひらりひらりと舞い降るように 少しずつその唇が移ろい揺れる 目を閉じて思い描けば 空気だけではひどく冷たい その吐息や唇が燃えるように熱いから 唇がそっと離れていった瞬間 想い出までも消えてしまいそうで その唇を見つめてしまう 触れてしまう 指でゆっくりなぞってしまう それがすべてであるかのように この唇になにを含んだ? この歯はなにを噛んだ? 舌の上ではなにを上手に転がした? ただ眺めているだけで 焼けるほどの唇で...
冷たいぬくもり
2007年2月14日 01:19
気づいてしまった それは恋人や友人たちではなく いつも僕を癒してきたのは孤独だけだと “ひとりじゃない”とか“ぬくもり”だとかは いつもそこに変わらずあるだけの慰めでしかないと きっとそれは棘のない薔薇 そして孤独は棘だけの薔薇 不意に背中を向けられるたび突き刺さるんだ 僕もその気持ちがわかるから 否応なくわかってしまうから 思い知らされるんだ 孤独以外 自分以外 何が時を超えられるだろうって 傷つけたり傷つけられたり 痛みを知って それを隠すことも知った 意地を張ってそれに気づかぬふりをして 嘘でも騙すことでもなく わかってるのに言わないだけ 大声で泣きわめくことをしないように 時間も何も関係なく 痛みや傷が癒えることはなく それは記憶や意識が薄れるだけで 消えてしまうことはないから 癒えることは許すこと それは自分以外 誰にもできることじゃないから ひとりじゃないのは き...
ガラス瓶
2006年10月24日 19:13
互いの望むぬくもりの上で何度も体を重ねてみたけれど いつもそこにはコンタクトほどに薄い冷たさが隠れてる そこに触れたら反射的に体が離れてしまうように 終わりはないけど途切れるたびに あなたは優しい言葉やキスをくれるけれど いつの間にか汗が静かにひいてくように 時間と事実と嘘とともにわたしのなかから抜けていく 嘘でしか何も共有できないのかも あなたとわたしは違うから でもその誤解を埋めるのもわたしたちでしかない 真実なんて欲しがれば きっとわたしは泣いてるだけ あなたが望む関係なんて これまでずっと嘘の上に嘘を重ねて やがてそれが大きくなって築いてきただけ “いい関係”なんて どちらか一方に都合がいいだけ そして自分のなかにできていく小さく冷たい深い穴を 焦がすようにふさぐだけ ごまかして ごまかされて わたしたちがいつも求め合うように 嘘の上にしかわたしが欲しいぬくもりなんて...
もいちど恋して、何度も恋して、恋しくて。
2006年10月 3日 23:14
寒いだろ なにをそんなにつかんでるのさ 強く手をにぎりしめすぎだよ かしてごらん すごく冷たいね すごく震えていたんだね 鼻の頭が真っ赤だよ そんなに僕を見つめるより鼻水を拭いて そしてほら 涙も拭いて 苦しいのかい ホントに小さな罪をこれまで たくさん繰り返してきたね そのたびに大きな悲しみを乗り越えて 今こうして涙を流して笑っていられる きっと僕の知らない痛みも抱えて その細い手のひらには いくつもの傷が刻まれてるんだろう でも涙を拭いながら小さくにぎって それを隠しちゃいけないよ 僕にも見せて 僕にもそこに触れさせて 悲しみをにぎりつぶしちゃいけないよ 自分を壊しちゃいけない 自分のじゃない言葉で慰めたり そのすべてを背負うなんて言えないけれど そのときの深い悲しみがあったから 今の君があるんだよ それを壊しちゃいけないよ 僕はそれも大切にしたい どんな痛手もどんな孤独...
復讐
2006年9月 1日 00:38
終わりなきもの。 金。金。金…… それによって崩壊となっていった家族、親に対するそれでもある。 とりつかれたように働いた親。 僕らのためと言っていた。 でも結局は、自分のために見えた。 夜ごと店を渡り歩き、女の上をハシゴして、その女と落ちていく。果てしなく。 子供の僕には迷惑だった。 そして今、這い上がることすらできない見えない底でもがいている。 おれは金で育った。 金に育てられた。 聖徳太子のように親の言うことを器用に聞きわけ、福沢諭吉のように勉学をすすめた。 稲造さんは誰か知らない。一葉さんも最近知った。 夏目漱石のような『坊ちゃん』に生まれても、野口英世のような才覚はない。 コインのように財布になければ困り、ありすぎれば邪険にされた。 その金を稼いでいたのは親かもしれない。 でもその上に放り出された。 ...
「星がきれい」
2006年7月26日 19:47
車を降りてつぶいやいた 「星がきれい」 閉まるドアを待たずに駆け出した むこう側には何もないけど 闇が怖くなくなった こんなにも星がまたたく夜は 星の上を踏むように 冷たい地面に星座を作る こんな夜は月はなくても構わない 一人で星と戯れる 乱れた足のつま先があちらこちらで小石を蹴り 靴のかかとが草を滑る 伸ばした腕が風を受けて 溶け合うような星たちが弾んだ息で寝静まる そしてそっと心の音色に瞳を閉じる 純粋に ただ純粋に 「星がきれい」...